Ventus  01






音がする。


わたしの好きな音。









耳をこするように、通り抜けていく音。

もっと、もっと強く。

足元に広がる、鮮やかな緑を削り取っていくように。

巻き上がる

舞い上がる。





叫びたくなる。

この音に負けないように。



空は、蒼。

宇宙を大気が溶かした色。

暗黒を薄めた色。



大地は、緑。

どこまでも鮮やかで、まるでそれは

見えない力を、色で現したかのよう。



わたしを吹き消そうとしているの?



その明るさで、その力強さで。

わたしには、なにもないから。



わたしの希薄な存在を、消してしまいたいの?

確かなものを、感じられないこのわたしを。





そのとき





その光の中で、わたしは見た。







ずっとそこにいたのに

わたしは気づかなかった。





なんて存在感。





赤、そして黒。

頭の中で鮮烈に走った、イメージ。





まっすぐに伸びた背は、強さ。

でも、ガラス細工のように触れたら壊れそうで。





わたしなど気づかないはず。

だって、あなたはただ前しか見ていないから。





なにを見ているの、なにを考えているの?




あなたにはきっと

あなたみたいな人にはきっと

小さな存在のわたしなど目に入らないでしょうね。




なのに




ゆっくりと

こちらへと目が、顔が向けられる。




わたしを見る。

わたしを、貫く。

真っ青な空に囲まれている。

ふたりだけが浮かぶ空間。

なんて透き通って、なんて清浄な空気。



だからこそ、引き止めずにはいられなかった。

水色に、融けてしまいそうだったから。

あなたが遠くに行ってしまいそうだったから。



お願い

消えないで。









きれいなはずの蒼が、怖くなった。

雲のない空が、怖くなった。




消さないで。

どうか、消えないで。




痛いほどの叫びは

ただ切ない祈りは

届いただろうか。




風に乗って

どこまでも高く、どこまでも遠く

渡って行っただろうか。











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